「論理アタマをつくる!ロジカル会話問題集」第4章 メタファーとアナロジー(設問22-28)

メタファー(比喩)やアナロジー(類推)は我々の思考力の基本動作とも言える身近なものです。

これらをうまく使うと、思考力を活性化し、ものごとの理解を助けたり、会話に深みを持たせたり、うまく進めることができます。

同時に、関連のないメタファーやアナロジーの誤用は、思考や会話の混乱を引き起こします。

そこで、この章では、メタファーやアナロジーをうまく使いこなすコツを紹介します。

ロジカル会話問題集 設問23「ポイント稼ぎの教育セミナー?」

「うちの人事部はエンプロイーサーベイ(社員の意識調査)の時期になると、やたらに企業理念の教育セミナーを開催したりする。つまり、サーベイのポイント(調査結果)をあわてて引き上げようとしているわけだ。しかし、これでは現状の実態を調査するというサーベイ本来の目的から外れているのではないか? 喩えていうならば、……」

 この後に続く、適切な喩えを一つ選ぶと?

A:選挙の買収工作

B:人間ドックの前の禁酒

C:後だしジャンケン

D:火事場ドロボー

E:リコール隠し

ロジカル会話問題集 設問23解説

適正なメタファーは伝達機能を高める

 話のうまい人はメタファーもうまい! そう思ったことはありませんか。それもそのはず、すでに述べたように、メタファーは、相手の頭にイメージを投影することができますから、それによって相手の理解も高まるのです。聞き手が初めて聞く話、体験していないことでもメタファーによって、その理解を助けることができます。

 コンサルタントとしていろいろな企業に行くと、当然のことですが、それぞれの専門分野の話が出てくることがあります。ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置、バイオテクノロジー、あるいはファッションデザイナーがいかにインスピレーションを生み出しているか、などなど、もちろん、こちらが直接その分野の仕事をするわけではないのですが、インタビューなどの際は、ある程度理解しなければなりません。

 その時、メタファーのうまい方とそうでない方はこちらの理解は全く異なります。メタファーに乏しい方は反対に、こちらから積極的にメタファーを使って、確認をしたりすることがあります。

 このように、メタファーは分野の違う人に説明をする時にも大変便利で、情報を共有する時、教える時には大事なものなのです。

 実は、福沢諭吉が『学問のすすめ』の中で、すでにこのことを書いています。「丸い」ということを小学生に伝える時に、「水晶の玉のごとく」といわずに、「だんごのように」と言えば、相手に伝わりやすいだろう、という趣旨です。

メタファーに必要なのは相似形

 実は、メタファーを使う時に大事なことがここにあります。相似性が必要だという点です。相似性がなければ「見立てる」ことはできません。

 さて、では、このあたりで問題の解説に入りましょう。セミナーでの正答率は80%近く、どちらかというとやさしい問題です。ただし、この問題も余計な思い込みがあると、〈リコール隠し〉を選んでしまったりすることがあります(人事部に恨みがあるのかもしれませんが……)。

 時々、〈選挙の買収工作〉を選ぶ方がいます。もう一度、相似性に着目しましょう。実施の前に何かをする、という点では確かに買収工作も該当します。

 しかし、選挙の買収工作は違法性がありますし、教育セミナーは買収工作ではありません(例外としてカルトグループはそうかもしれませんが……)。  となれば、正解の〈人間ドック前の禁酒〉との相似性が確認できるでしょう。

ロジカル会話問題集 設問23 回答

正解はB

適正なメタファーは伝達力を高める。

その際に相似性をチェックすること

(文責:グローバルインパクト 代表 船川淳志)