「論理アタマをつくる!ロジカル会話問題集」第4章 メタファーとアナロジー(設問22-28)

メタファー(比喩)やアナロジー(類推)は我々の思考力の基本動作とも言える身近なものです。

これらをうまく使うと、思考力を活性化し、ものごとの理解を助けたり、会話に深みを持たせたり、うまく進めることができます。

同時に、関連のないメタファーやアナロジーの誤用は、思考や会話の混乱を引き起こします。

そこで、この章では、メタファーやアナロジーをうまく使いこなすコツを紹介します。

ロジカル会話問題集 設問27「パレートの法則が当てはまるのはどちら?」

「20-80ルール」と言われるパレートの法則がある。19世紀のイタリアの経済学者が発見したもので、当時20%の人口が総資産の80%を保有していたことを表している。

 次の中で「20-80ルール」と

言いがたいものを一つ選ぶと?

A:少数の売れ筋商品が、会社の大半の収益を占める

B:少数の対策案が、予算の大半を占める

C:少数の代理店が、売上の大半を占める

D:少数のクレーマーが、クレーム処理の大半を占めるE:少数の極端な事件が、週刊誌の記事の大半を占める

ロジカル会話問題集 設問27解説

置き換え力は応用力を育む

 マーフィーの法則、グレシャムの法則などと「○○の法則」というのが世の中にあふれています。その中でもビジネスの世界で使い勝手がよいものの一つがこのパレートの法則です。問題文にあるとおり、20%の人口が総資産の80%を保有しているということで、グラフで示すと次ページのとおりになります。

 パレートの法則、もしくはパレート分析とも言われ、いろいろな事象に当てはまることがあります。環境問題でも、今では世界20%の人口の人が世界の80%のエネルギーを使用している、とも言われています。生命保険業界でも、上位20%の代理店が全体の80%の売上を占るということがありました。

 さて、設問27の解説に入りましょう。パレートの法則に限りませんが、法則を使いこなすためのコツも実は「置き換え力」が大事なのです。これまで述べてきたように、メタファーの基本は相似性のチェック、そしてa:b=c:dの構造になっているかどうかの確認が重要。特に、アナロジー(類推)の基本はこの部分です。法則を当てはめるということはアナロジーなのです。

 つまり、

 20%の人口:80%の総資産=20%の代理店:80%の売上

 とアナロジーのチェックをしていけばよいのです。これは選択肢を式に置き換えたものですが、まさにパレートの法則が当てはまっています。他についても書き直してみましょう。

 A 20%の商品:80%の収益

 B 20%の対策案:80%の予算

 D 20%のクレーマー:80%のクレーム処理時間

 E 20%の記事:80%の週刊誌の記事

 さて、ここでよく見てみましょう。一つだけ、タイプの違うものがあります。そうです。は編集者の選択が直接週刊誌の記事に反映されます。正解はです。つまり、恣意性が直接反映してしまっています。

 パレートの分析は、結果的に右側が80%になっていた、ということで、恣意的にしていることではありません。

 このように、置き換え力をしっかり身につけておくと、○○の法則や原則の応用力を高めることになるのです。考えてみれば、「ピタゴラスの定理」、「万有引力の法則」を習って問題に取り組むことは学校でやってきたわけです。機械的に当てはめて教えていたり、教わっているだけでは、当然、応用力は身につきません。昨今、小学生の応用力が低下しているという話がありますが、教える側ももっと工夫して置き換え力を鍛えてほしいものです。

ムーアの法則を自分にあてはめる

 話がそれたついでに法則の置き換えで、おすすめしたいことがあります。「ムーアの法則」というのを聞かれたことがありますか? これは、インテルの創業メンバーの一人、ゴードン・ムーアが言ったことで、「半導体の集積密度は18か月ごとに2倍になる」というものです。フラッシュメモリーやデジカメを買うとこのムーアの法則がよくわかります。ちょっと前まで、1ギガのものが主流だったのが、4ギガのフラッシュメモリーがしかも安く買えるというのは、このムーアの法則が依然として働いているからです。

 おすすめしたいのは「ムーアの法則を自分にあてはめる」ということです。脳みそを2倍にするという意味ではありません。18か月、あるいは1年ごとでもいいのですが、自分のやっていることを振り返って、「どれだけ新しいスキルを身につけただろうか?」「どれだけ新たな学びがあっただろうか?」と自問自答することです。  ぜひ、「ムーアの法則」をご自身にも置き換えて、さまざまなスキルを伸ばしてください。

ロジカル会話問題集 設問27 回答

正解はE

アナロジーはa:b=c:dに忠実に。

置き換え力はさまざまな法則を応用する力を育む

(文責:グローバルインパクト 代表 船川淳志)