グローバルイングリッシュ48の秘訣 第2回

「世界で活躍できる英語の力」を身に付けるための心得2/12

Active Listening! 聞かないとしゃべれないよ!

 「英語が話せたら……」というせりふをよく耳にします。しかし、冷静に考えてみましょう。コミュニケーションはキャッチボールです。自分だけが一方的に話してもコミュニケーションは成り立ちません。お互いに言葉をやり取りすることが必要なのです。そこで、2番目の心得として今回紹介したいのがActive Listening!積極的に「聞く」ことです。逆説的に受け取られるかもしれませんが、ちゃんと聞かないと、実はしゃべれないのです。


外国人のフラストレーション

 外国人からこんな話を聞いたことがあります。
I was in Japan providing a presentation for a group of Japanese, let’s say about 20 people. Although I said to the Japanese participants up front, “Do not hesitate to ask any questions. You can stop me anytime if you need clarification,” they stayed very quiet without asking any questions. After 40 minutes or so I asked them, “Any questions?” Then, I saw one gentleman raising his hand. So I was excited and told him to go ahead. He said, “When can we have a break?”

(20人ぐらいの日本人にプレゼンテーションをおこなっていました。最初に日本人の参加者たちに、「遠慮しないで質問してください。いつでも、確認が必要ならば私の話を止めていいです」と言ったのですが、彼らはずっと静かで質問は出ませんでした。40分ぐらい過ぎてから「何か質問はありますか?」と尋ねました。すると、1人の男性が手を挙げたのです。そこで、私は喜んで、彼にどうぞと言いました。彼は「休憩はいつですか?」と聞いたのです)

 これと似たような話は幾度となく聞いてきました。日本人にプレゼンテーションをおこなう場合だけでなく、会議でも、日本人が黙って聞いていることに対して、不安やフラストレーションを感じる外国人が少なくありません。ほかにも「いったいどこまで理解しているのか、まったくわからない。理解していないのではないかと思うと、実はよくわかっていたりする」「中国人や韓国人のほうが、日本人よりはっきりモノを言うし、理解していないときにはちゃんと伝えてくれる」というコメントもよく聞きます。
 どうやら、「黙って聞く日本人」というイメージが、残念ながらグローバルビジネス社会の中で広まってしまったようです。


日本人はなぜ、黙って聞いてしまうのか

 一方、日本人にも言い分があります。「英語をしゃべる苦労を少しはわかってほしい。少し話すと、まったく遠慮なしに早口で話しかけてくる」という不満を聞くこともよくあります。相手のスピードについていけないために黙ってしまう気持ちは理解できますが、そういう場合には≪心得1≫で紹介したように、相手にゆっくり話してもらうことを堂々と依頼すればよいのです。
 われわれが黙ってしまう理由は、ほかにもいくつか考えられます。
①単語や文章で理解できない箇所があっても、話の展開から推論できると考えるから。
②会議やプレゼンテーションで複数の参加者がいる場合、理解していないのは自分だけだと思い、尋ねることは相手だけではなくほかの人にも迷惑をかけると考えてしまうから。
③話がまったく理解できずに、もはや黙って聞くしかないという状況だから。
 ①はよく見られるケースです。確かに、わからない単語があるたびに、逐一、話を止めるのは気が引けますし、話の脈絡から推論することは決して悪いことではありません。ただし、重要なキーワードや推論不可能な箇所については確認する必要があります。
 ②についても、「ほかの人に悪いから……」と思ってしまう気持ちはよく理解できます。ただ、実際に外資系企業での英語の会議に同席してみると、休み時間に「なんだ、あなたもわからなかったのか。だったら聞けばよかった」という声が聞こえてきたり、あるいは、思い切って確認を求めた人がほかの人から「私もわからなかったので、助かった」と感謝されていたりする場面を多く見てきました。思い悩む前に聞いてみればいいのです。


「止めること」が理解を進める好循環に

 いずれにしても、③のような状況になる前に、質問や確認をしたり、話を止めたりすることは、お互いのコミュニケーションを円滑にするためにむしろよいことなのです。日本では、「人の話は黙って最後まで聞く」ことがよしとされてきました。もちろん、英語の環境でも、相手のセンテンスを途中でむやみに止めることは勧められません。しかし、聞き手が理解できないことや知らないことについて、アクティブに質問し、確認を求めることは、話し手から見ても大歓迎なのです。
 図Aを見てください。黙って聞いていると、わからない箇所はどんどん増えていきます。そうすると、話は余計に把握しにくくなって、質問の機会すら逸してしまうのです。その結果、③の状況に陥り、理解していないのに黙って聞く、という悪循環になってしまいます。一方、適宜質問や確認をしながら聞いていると、わからない箇所は減っていきますので、話は理解しやすくなります。そうすれば、自分の意見を述べることもできるようになり、さらに新しい質問もしやすくなって、好循環が生まれます(図B)。
 ぜひ、聞き上手は確認上手であり、質問上手であることを認識して、Active Listening!を実践してください。


グローバルイングリッシュの秘訣5
人の話は止めてもいいんだ

 《心得2》で述べたように、「人の話を黙って聞く」のではなく、適宜、相手の話を止めて、確認したり、質問したりすることは重要です。ビジネスの場面でよく起きるケースを見てみましょう。

≪ケース1≫
インド人のエンジニアがあなたに説明をしています。アクセントが強いことに加えて、早口で話しますので、ついていけません。さて、どうすればよいでしょう?

≪ケース2≫
プロジェクトチームの会議に参加したところ、途中でアメリカ人とシンガポール人のメンバーが2人で話し始めました。あなたもこの会話に入りたいのですが、どうしたらよいでしょうか?(図C)
 ケース1は「1対1」の状況、ケース2は相手が複数の場面です。気後れしてしまうと、余計に途中で止めにくくなります。どちらのケースにも当てはまる「止める」コツを紹介しましょう。

コツ1 「止める」のは早い段階のほうがラク

 「走っている電車を止めるのは無理だけれども、動きだしたばかりの電車ならば止めやすい。それに似ていますよ」と言ってくれた人がいます。スピードがついた相手の話を止めるのはかなりたいへんですが、話し始めた段階で止めるのはラクなのです。

コツ2 タイミングが重要

 先に述べたように、センテンスの途中で遮るのは避けるべきですので、センテンスの終わりを狙うのが鍵です。

コツ3 まず何かを言う

 最初から完璧に話そうとすると、こちらにもプレッシャーがかかります。まずは相手の注意を引くことが大事です。たったひと言でも十分効果があります。
 例えばMay I?あるいはAhm.のひと言で、相手はこちらの発言を促してくれます。その後で、ケース1ならばExcuse me. I’m not following.(following youではなくfollowingで大丈夫です)あるいはCould you slow down a little bit?と言えばいいのです。ケース2ならばMay I join in?とかI’d also like to share my points.と言えば、相手はSure!あるいはGo ahead!と言ってくれるでしょう。

コツ4 表情と体も効果的に使う

 ケース1の場合、一度ゆっくり話してほしいと言った後で、再び聞き取りにくくなってしまったときには、聞こえなかった表情をすれば、相手はかなり高い確率で繰り返してくれます。ケース2の場合には、相手の2人がこちらに気づかないこともあり得ます。そんなときには、手を挙げ、体を前のめりにし、口を開けながら「言いたいことがある」と意思表示をします(図D)。これは英語を使う場合だけではありません。相手の話を止めるためにとても効果的なテクニックです。文字どおり、体を張って、止めてもいいのです!

グローバルイングリッシュの秘訣6
 聞き上手は確認上手

 聞き直すときのフレーズとしてよく知られているのが、
I beg your pardon.(もう一度言ってもらえますか)ですが、これを言っているだけではワンパターンになって、確認の効果がなくなってしまいます。また、これを多用すると、ちゃんと聞いていないのだろうか、と相手に思われてしまうこともあります。
 そこで、状況に応じた確認のテクニックをいくつか知っておくと便利です。

確認テクニック1 相手の文章が聞き取れなかった場合

 I beg your pardon.のほかにPardon me./Excuse me. I didn’t hear.あるいは手を耳に当てながら単にExcuse me.とだけ言えば、相手は言い直してくれます。

確認テクニック2 文章や単語は聞き取れていても、論旨や意味がよくわからないので、相手に補足の説明を求めたい場合

 Could you elaborate that point?あるいはMay I ask you to elaborate that a little bit? が有効です。elaborateは「事細かく的確に言う」という意味で、相手に説明を加えてもらいたいときには便利な言葉です。elaborateの代わりに、clarifyを使うこともできます。
 clarifyはclearの動詞形で「明らかにする」という意味です。ビジネスでは使用頻度の高い言葉ですので、ぜひ覚えて使ってください。

確認テクニック3  文章の一部が聞き取れない場合

 例えば、相手が自己紹介でI’m from Conne…と言ったとしましょう。つまり、相手の出身地が聞き取れなかった場合です。このようなときにI beg your pardon.やPardon me.と言ってしまうと、もう1回最初から聞くことになってしまいます。
 そこでお勧めしたいのがピンポイントで聞く方法です。この事例の場合ならYou are from where?です。whereの語尾を上げ、大きく発話します。中学校の文法では、Where are you from?と習ったかもしれませんが、実際にピンポイントで確認するために効果的な言い方は、You are from where?です。こう言えば、相手はOh, Connecticut. You know where it is?と述べながら説明してくれるでしょう。同様に相手が、I met Ms. Mck…と言って、Mckのあとが聞き取れなかったらYou met who?(この場合、whomは使いません)と言えば、Ms. Mckennaと答えてくれるでしょう。ほかに、You did what?あるいはHe joined what?なども使い勝手がいい表現です。

確認テクニック4  話の流れがわからなくなった場合

 率直にI’m a little confused.と述べ、Could you repeat that one more time?あるいはCould you clarify your point?などと言えば、相手は論旨を要約してくれるでしょう。

 以上紹介したように、確認のための表現のバリエーションは多く持っておくとよいでしょう。状況に応じて使い分けることができるだけではなく、ワンパターンを避けることもできます。同じ言い方だけを何度も繰り返すのはお勧めできません。いくつもの言い方を知っておけば、自ずと確認できる機会も増えるのです。

グローバルイングリッシュの秘訣7
 聞き上手は質問上手

 A good listener asks good questions.「聞き上手は質問上手」。英語の環境では、文字どおりよい聞き手はよい質問をすると言われています。学校の授業でも、質問することは奨励される(encourage)ことはあっても、押さえつけられる(discourage)ことはまずありません。プレゼンテーションや講演会でも、Q&Aの時間が日本では最後の10分、15分というのが一般的ですが、英語環境では、Q&Aの時間をスピーカーが話す時間よりも多く取ることは、決して珍しいことではありません。要するに、質問することはよいことであり、話し手も質問を受けることには慣れていると考えていいのです。
 では、質問するときの「型」を紹介しましょう。

質問の型1 Permission:相手の許可を得る

 いくら英語の環境では質問が歓迎されるといっても、多少のマナーは必要です。その意味で、まず相手から許可をもらう、あるいは相手にこちらが質問することを伝えるフレーズを知っておくと便利です。
 May I ask a question?(文法的にはMay I ask you a question?ですが、口語ではyouを入れないほうが一般的です)またはLet me ask a question.が有効です。いくつか聞く場合、あるいは話の展開によっては質問が1つかどうかわからない場合にはMay I ask some questions?あるいはI’d like to ask some questions.と言うのがよいでしょう。

質問の型2 Question:質問はKISSが基本

 KISSとはKeep it Short and Simple(単純に・手短にしておこう)の意味でよく使われる略語です(もともとはKeep it Simple, Stupid)。これは、質問をするときにも当てはまります。何が聞きたいのかを、明確に短く、です。もう1つのSとしてsuccinct(簡潔な)も心がけましょう。

質問の型3 Reasoning:質問の意図、質問した理由を伝える

 質問をしたときに、相手の表情をしっかり見ることは重要です。質問の内容が伝わったのか、そして質問の意図が理解してもらえたのかを確認することができるからです。そして質問をする理由を実際に伝えることも、状況に応じて必要になります。例えば、確認のための質問ならばI’d like to confirm my understanding.「自分の興味から」と言いたいときはJust out of curiosity.あるいはI just want to know.と言ってもいいでしょう。相手の答えから判断して、こちらの質問の意図が伝わっていないことがわかったら、The reason why I’m asking this question is that…と述べることも効果的です。

質問の型4 Appreciation:質問への答えに謝意を示す

 質問に答えた相手が最後にDid I answer your question?あるいはIs that what you are looking for?などと言ってくることがよくあります。その場合はYes. Thank you so much.と言って、謝意を示しましょう。相手がこちらに確認を求めない場合も、相手の答えのあとに、ひと言 Thank you.と返しましょう。

 以上のPermission、Question、Reasoning、Appreciationを質問の4つの型として身に付けてください。

グローバルイングリッシュの秘訣8
 Rephrasing/リフレージング

 1対1の会話で、改まって質問するほどでもない、でもわからない単語を確認したい場面があります。そんなときに便利な手法が「rephrasing/リフレージング(聞き返し)」のテクニックです。
 実は、日本語でもこのリフレージングは相手の話を促して、さらに情報を引き出したり、あるいはわからない言葉を確認したりするためによく使われます。
 例えば、「うちの会社も発注システムが変わってね。コンプライアンスの影響もあるから」という発言を受けて、「ああ、コンプライアンスの影響で……」と繰り返して言えば、相手は「そうそう、監査もだいぶ厳しくなって……」と話を続けやすくなるのです。あるいは「コンプライアンス?」と語尾を上げて聞き返せば、意味の確認を求めていることが伝わり、相手は「ほら、法令の遵守とか言っているじゃない」と補足の説明をしてくれるわけです。
 日本語でやっていることを英語でもおこなえばいいのです。聞き取れたところまで繰り返して、最後に語尾を上げて相手に説明を求めてみましょう。このリフレージングのテクニックを知っておくと、知らない単語を確認するときには特に便利です。
 例えば、採用担当の人事マネジャーがI’m looking for someone who can demonstrate what I call “three A’s” – Accountability, Adaptability, and Agi…と言ったとしましょう。3つのAともいえる資質を発揮できる人が欲しい―。それはAccountability(説明責任)とAdaptability(適応力)……と2つまでは聞き取れたのですが、最後の言葉がわからなかった場合です。そんなときには、Agi…? と聞き取れた箇所だけを、語尾を上げて聞き返すのです。そうすると、相手はAgility? I mean someone who can move and respond quickly.(俊敏さ。素早く行動をとり、反応を示せるという意味です)と説明を加えてくれます。
 リフレージングは、略語の意味を聞くときにも便利です。例えば、IT担当のスタッフがI’d like to have a meeting with you about the new ERP installation.と言ってきたとしましょう。ERPが何を意味するのかがわからないとき、教科書的な英語ならWhat does ERP stand for? と聞くことを勧めるでしょう? ところが、これではあまりにも改まったニュアンスで、スピーディーな対応が求められる現場にはなじみません。実際にはたったひと言、ERP?と語尾を上げて言えば、相手はOh, Enterprise Resource Planning. It’s for maximizing efficiency of resource allocation.(経営資源の一元管理計画のことです。経営資源を適切に配分して効率を最大化するためのものです)などと補足の説明をしてくれます。
 このように、リフレージングは応用範囲が広く、しかも素早く、効果的に確認することができます。いろいろな場面で使ってみてください。

(文責:グローバルインパクト代表取締役・マネージングパートナー 船川淳志)