「論理アタマをつくる!ロジカル会話問題集」第3章 ロジックの基本、演繹と帰納(設問15-21)

論理アタマをつくるには、最低必要な原理原則を理解しなければなりません。

そうでないと、第1章でも紹介したように「それは、あなたのロジックで私のロジックは違う!」という詭弁の罠にはまってしまったり、勝手な屁理屈と区別することもできません。

その意味で、演繹と帰納は論理アタマをつくる必須の原理原則の一つです。この二つは中学や高校でも学んでいるのですが、より実践的な学び方をこの章で紹介しましょう。

ロジカル会話問題集 設問19「サブプライムは中国でも発生する?」

最近発生したサブプライム問題は、以前日本で起きたバブル崩壊のようなものだ。日本で起きたことが米国でも起きた。近い将来中国でもバブルが崩壊するに違いない。

 上記の主張の論理展開の弱さを

指摘するものとして、もっとも適切なものは?

A:中国の一部の地域ではすでにバブルが発生しているんですよ

B:中国よりもイギリスでバブルが崩壊したほうが大変です

C:経済成長の低下した日本や米国と違って、中国の経済成長率は高いままです

D:サブプライム問題の本質は投機的なファンドの存在です

E:中国でバブルが崩壊するという先行指標はまだ出ていません

ロジカル会話問題集 設問19解説

共通点はなに?

 確かに米国も日本も中国も国家という共通点はあります。では、地球上のどの国家でもバブルが起こり崩壊するか? バブルの発生・崩壊には、その前段階としてある程度経済的に成長している必要があると同時に、その投資環境の自由度など、いくつかの条件が必要です。

 こうした観点で見るとどうでしょうか? 日本も米国も、上であげたような条件を満たしています。しかし、日米と中国では経済の成熟度において、まだ大きなへだたりがあります。従って、日米を例にあげて中国も同じことが成り立つという論法は安易であり、この帰納法で扱っている事例に中国は該当しないと言えます。

共通点の「くくり方」が重要

つまり重要なのは、共通点の「くくり方」なのです。くくり方が広すぎると結論がぼやけたり、妥当でない結論となる場合があります。逆に〈中国の一部の地域ではすでにバブルが発生しているんですよ〉や〈中国よりもイギリスでバブルが崩壊したほうが大変です〉のような結論そのものに目が行ってしまう水掛け論や、〈中国でバブルが崩壊するという先行指標はまだ出ていません〉のようなデータによる反論は、論理展開の弱さを突いたことになりません。〈投機的ファンドの存在〉の指摘は、あまりにも論点がずれています。

ロジカル会話問題集 設問19 回答

正解はC

日本と米国の仲間に中国を入れてしまってよいか?

前提となる経済状況が違う場合は、必ずしも同じ結果にはならない

(文責:グローバルインパクト 代表 船川淳志)