思考力を養う「論理アタマをつくる!ロジカル会話問題集」第1章ロジカルとは何か(設問1-7)

論理思考、ロジカル・シンキングが普及してきたと述べましたが、“ロジカルとは何か?”、“論理とは何か?”の理解はなかなか進んでいないようです。

「業界の論理はそんなもんじゃない!」

「それは、あなたのロジックで私のロジックは違う!」

というように、安易に使われることもあります。

あるいは、論理と屁理屈の区別がつかない人もかなりいるようです。そこで、この章では、論理とは何か、ロジックとどう違うのかを考えてみましょう。

ロジカル会話問題集設問5「心理的な表現に惑わされないためには?」

「『財務指針』は企業経営者の3人に一人が購読している月刊経済誌です」

この雑誌が購読者をさらに獲得するために、上記の宣伝文句を論理的に続けると?

A:「財務指針」は他の月刊経済誌よりも重要なデータを保有しています!

B:「財務指針」なくては企業経営者はつとまりません!

C:「財務指針」はこれから企業経営者を目指す方には必携です!

D:企業経営者で「財務指針」の購読者の多くは企業経営に有益であったと答えています

E:話題のT社のX氏も読んでいます

ロジカル会話問題集 設問5解説

論理的か心理的か?

 論理アタマを鍛える対象の一つに広告があります。

 さて、この設問5。実は大手広告代理店の2社でやってもらったことがあります。参加者は他の企業の方よりも苦戦したのです。それもそのはず、実際の広告コピーとしてはどれもありえるような選択肢を用意しているからなのです。

 実は問題文の1カ所がポイントです。「論理的に続けると」というのを「脅迫観念に訴えてみると」とすると、〈「財務指針」なくては企業経営者はつとまりません!〉や〈「財務指針」はこれから企業経営者を目指す方には必携です!〉が挙がるでしょう。「センセーショナルに訴求すると」と換えると〈話題のT社のX氏も読んでいます〉が該当します。

 つまり、実際の広告はこのような心理的アプローチが多くとられているのです。設問1で論理的とは明確な「よりどころ」が必要と述べました。まだ購読していない3分の2の企業経営者だけではなく、多くの企業経営者を目指す人や興味のある人を獲得するための論拠をのべているのは? という条件を探すと 〈企業経営者で「財務指針」の購読者の多くは企業経営に有益であったと答えています〉にたどりつきます。ついでに、〈「財務指針」は他の月刊経済誌よりも重要なデータを保有しています!〉はSo what?(だからなんなの?)という点が不明確。

 人の心理に働きかけているか、論理に働きかけているか、それを識別できるようになると、さらに論理思考が強くなるのです。

ロジカル会話問題集設問5 回答

正解はD

論理的に展開しているのはD。

B、C、Eは広告や雑誌などにありがちな心理的なアプローチ

(文責:グローバルインパクト 代表 船川淳志)