「論理アタマをつくる!ロジカル会話問題集」第2章 因果関係に強くなる(設問8-14)

大声で泣けばお母さんがすぐ来る。

ベッドから落ちると痛い。

幼児がいろいろなことを早く学ぶのは、このように、原因と結果が近くてわかりやすい環境、つまり因果関係が単純な状況に居るからです。ところが、大人になると、因果関係は複雑になってきます。結果がわかるまでの時間は長く、どれが本当の原因なのかわかりにくいことのほうが多いのです。

それでも、何が本当の原因かを考える姿勢は思考力を伸ばす上では欠かせません。

この章では、ロジカルシンキングの基本、因果関係を見きわめるコツを紹介します。

ロジカル会話問題集 設問9「有名になると政治家に転身する?」

田中「テレビで脚光を浴びた弁護士は知事になったし、あの有名コンサルタントも政策提言の本を出版した。有名になると政治に関心を持ち始めるようだね」

大田「それはどうでしょう。……」

 以下の大田氏の反論で、田中氏の論理展開の弱い部分を、もっとも突いているものは?

A:彼らはもとから政治に関心を持っていたのでは? だって有名になっても政治に関心を示さないタレントも大勢いるし

B:彼らは本業以外で脚光を浴びられるものだったら、政治でも何でもよかったんですよ

C:政治に関心を持つと、従来のファンや支持者が離れていくので、わざわざそんなことはしないでしょう

D:彼らは地盤がないから、いくらカバンと看板があっても政治家として大成しないでしょう

E:彼らはもとから政治に対して強い関心を持っていたから有名になったのでは?

ロジカル会話問題集 設問9解説

因果関係の法則1 原因は結果の先である

 ここでは前問の解説で取りあげた因果関係の成り立つ条件を、実際の問題にそくして見ていきます。因果関係でまず確認したいのは、原因と結果の時間的関係、つまり、原因が先で結果が後にくる、ということです。この点に注意しながら、設問9を見てみましょう。

 田中氏の主張を見ると、「有名になる」という原因が、「政治に関心を持つ」という結果を生み出している、となっています。

 ただ、現実的に、有名になると政治に関心を持つ、というのは今ひとつピンときません。もとから政治に関心を持っていたと考えるほうが自然でしょう。つまり、田中氏の発言では、原因と結果の時間的関係が逆転していると考えられます。

 となると、〈政治に関心を示さないタレントもいるし〉のように、田中氏の言っていることに該当しない例がある、と反論すればよいことがわかります。「有名→政治に関心」という時間的順序があるなら、有名になれば必ず政治に関心を持っているはずです。

 時間軸で原因と結果をチェックすることが、因果関係を把握する第一歩なのです。

ロジカル会話問題集 設問9 回答

正解はA

原因と結果の時間的関係を常に意識することで因果関係が把握できる

(文責:グローバルインパクト 代表 船川淳志)