「論理アタマをつくる!ロジカル会話問題集」第4章 メタファーとアナロジー(設問22-28)

メタファー(比喩)やアナロジー(類推)は我々の思考力の基本動作とも言える身近なものです。

これらをうまく使うと、思考力を活性化し、ものごとの理解を助けたり、会話に深みを持たせたり、うまく進めることができます。

同時に、関連のないメタファーやアナロジーの誤用は、思考や会話の混乱を引き起こします。

そこで、この章では、メタファーやアナロジーをうまく使いこなすコツを紹介します。

ロジカル会話問題集 設問22「英語よりもグローバルな存在?」

マネーは英語よりもグローバルな存在です!

上記はある経済情報誌の広告コピーです。

マネーのかわりにいろいろな語句を

当てはめることができますが、

下記からもっとも相当しにくいものを一つあげると?

A:スポーツ

B:科学

C:俳句

D:政治

E:ファッション

ロジカル会話問題集 設問22解説

「置き換え」は思考を活性化する

 置き換えて考える力=「置き換え力」は思考力の中核です。数年前、2匹のネズミと2人の小人がチーズを探しに行く寓話がベストセラーになったことがありました。外資系企業の間で、管理職者に配布したところも複数社あったほど一時期話題にのぼりました。この本に限らず、寓話に置き換えられたビジネス書は少なくありません。

 考えてもみれば、さまざまな「置き換え」が日常で行われています。モデルに置き換え、数式に置き換え、さまざまな知恵は「置き換え」によって受け継がれてきたと言っても過言ではないでしょう。

 第2章でも、一致法差異法を紹介した際に、現象が起きている主体や場面を置き換えて、それが本当の因果関係なのか、そうではないのかがわかると述べました。「以前は起きていなかったのでしょうか?」と時間軸を置き換えたり、「他の会社では同じ問題はないのでしょうか?」と空間軸を置き換えると、因果関係を検証し、さらに根本的な理由をあぶりだす効果があることを述べました。

メタファーは伝達機能の置き換え

 このように「置き換え」にはいろいろな効果がありますが、大別すると検証伝達の2つの機能があります。検証機能を持つ「置き換え」としては、先に述べたように時間軸、空間軸を置き換えて考えることは大変効果的です。「以前はどうだったのだろうか?」と時間軸を過去に求めるだけではなく、「今後はどうなる?」と将来に伸ばすと長期的な計画立案やリスクマネジメントにもなります。

 伝達機能の「置き換え」が「メタファー(比喩)」です。メタファーによって、言葉で聞いていた事柄のイメージをすぐに伝えることができます。会話がふくらむし、思考がさらに活性化されます。

 メタファーについて、瀬戸賢一氏は『メタファー思考』(講談社現代新書)の中で「〈見立て〉と考えるとわかりやすい」と述べています。「AをBと見るとき、Bにメタファーが生まれる」とも言っています。BはAのえということです。

 さて、このあたりで問題の解説に入りましょう。最初に類似問題で考えてみましょう。

 「○○に国境はない!」

 よく聞くセリフですが○○の中にどういう言葉が入りやすいでしょうか? ワールドカップを考えたら、サッカーがすぐ思いつくかもしれません。もちろん、スポーツ、音楽、芸術と入ってもよいでしょう。研究者ならば、何と言っても科学や技術をあげるかもしれません。そして、インターネット関連ではまさに、「グーグルに国境はない!」「アマゾンに国境はない!」ということになるでしょう。

 さて、「この○○に国境はない!」というセリフにちょっと近いのがこの設問22です。

 このコピーはひとひねりあるからおもしろいと思いました。もう一度見てみましょう。

 「マネーは英語よりもグローバルな存在です」

 確かに英語はネットの影響もあって急速に世界に広まっていますし、グローバルビジネスの公用語であることは周知の事実です。

従って、一般には「英語はグローバルな存在」という認知があるからこそ、このコピーが生きるわけです。しかし、マネーの部分が

 「タイ・バーツは英語よりもグローバルな存在」

 であると違和感があるでしょう。ユーロでもドルでもなく、ここはマネーという言葉に置き換えたので経済情報誌の広告として生きるわけです。

 さて、となればもう解答は見えてきたでしょう。

 スポーツも科学も、そしてファッションも当てはまりやすいのでこれらはすぐに除外できるでしょう。残るは「俳句」と「政治」です。「俳句は日本固有」と思ってしまうと、俳句に飛びついてしまいます。しかし、今や俳句は英語圏の人はもとより、それ以外の外国人でも、たしなむ人が増えています。

「グローバル」の反対は「国境を意識する」、「国それぞれのこと」となれば政治になるでしょう。正解は〈政治〉です。今のところ、政治は国益を考えるということからすると、そう簡単に国境を越えるわけにはいかないからです。

 この設問22は、置き換えを考えることで、思考を活性化させることが一つの目的です。  まだ違和感を覚える方は、俳句のかわりに生け花、茶道と置き換えればご理解いただけるでしょう。広告文としてみたら、俳句協会のような団体からすれば、まさに「俳句は英語よりもグローバル」というのは、よいつかみではないでしょうか。

ロジカル会話問題集 設問22 回答

正解はD

置き換え力は思考を活性化する。

ことばをおきかえることによって、検証したり、より明確なイメージを訴えることができる

(文責:グローバルインパクト 代表 船川淳志)