「ロジカル・シンキング研修」、「クリティカル・シンキングセミナー」、こうした研修プログラムを用意していない大手企業は、もはや、ないと言っていいほど、この数年間で急速に広まってきました。

 新人研修の中に盛り込む企業も多く、本も数多く出回っています。

ロジカル・シンキングとクリティカル・シンキングはどう違う?

 ところが、言葉が広まると、どうしても誤解も広まってしまいます。

 2002年に書いた『ビジネススクールで身につける思考力と対人力』(船川淳志、日経ビジネス人文庫)の中で、ロジカル・シンキングとクリティカル・シンキングを明確に定義しているのですが、再度、整理しておきましょう。

 まず、「ロジカル・シンキング」という言葉自体は和製英語です。英語では、Critical Thinkingといいます。Critical の語源はギリシャ語で「分ける」の意味があり、何が本物か、何が偽物か見きわめるという意味合いがあります。つまり、「クリティカル・シンキング」とは論理的に考える「ロジカル・シンキング」を内包し、なおかつ、情報を取り入れる際に我々の心理的、もしくは認知に関するバイアスにも考慮すべきというものです。

 ところが、日本では「クリティカル・シンキング」と称して、後者だけにフォーカスしたものがあると同時に、「ロジカル・シンキング」と言い、論理の組み立てだけを扱って、心理的なバイアスなどを考慮していないものもあります。

 仕事で必要なのは、論理的整合性と自分自身の心理的バイアスにも注意して考えることです。それが本来の「クリティカル・シンキング」を意味します。もちろん、和製英語とはいえ、ここまで広まった「ロジカル・シンキング」も同じ意味でとらえてもいいでしょう。本書ではその立ち場をとっています。ちなみに、本書のような問題はCritical Reasoningの問題としてビジネススクール出願時に受けなければならない試験GMAT(Graduate Management Admission Test)の中にも含まれています。Critical Reasoningは理由づけを明確に検証しながら推論するということです。

(文責:グローバルインパクト 代表 船川淳志)