97年の拙著、『Transcultural Management』(船川淳志、Jossey-Bass出版)の中に、Facilitatorがこれから重要な役割であるということを書きました。この日本語訳を考えて、「進行・調整・介助役」と同書の日本語版
 『多文化時代のグローバル経営』(トッパン)に書いたのです。

 Facilitatorは当時、一部の外資系企業で使われていた程度でしたが、それから、11年、この訳は不要になったほど、ファシリテーターの役目やスキルも広まってきたのです。

ファシリテーターはロジカル会話のナビゲーター

 ファシリテーターとは、プロジェクトや会議を進めるに際して、複数の参加者から意見、アイデアを引き出して、時に必要な意見調整や議論の軌道修正を行いながら、アウトプットを出す役目です。

 よって、会議やパネルディスカッションを担当するモデレーターやコーディネーターとは介在度合が深いことで大きく異なります。

 また、コーチは1対1のコミュニケーションですが、ファシリテーターは1対N、複数の参加者とやり取りをしながら成果を出さなければならないのです。

 従って、ファシリテーターにとっては、「ロジカル会話力」は必須のものです。加えて、相手からうまく話しを引き出したり、質問をしながら、さらに全員に深く考えてもらったり、また出てきたことをまとめて整理する分析力も必要です。つまり、思考力と対人力の統合スキルなのです。

 ファシリテータースキル育成プログラムもこの数年人気が高まっています。その背景には、階層型の組織の中で上位下達のコミュニケーションで仕事を進めていた時代からフラット組織の中で知的付加価値をいかに引き出していくかが求められる時代に移行したことがあります。多様なアイデア、意見をいかに成果に結びつけられるか、ファシリテーターはロジカル会話のナビゲーターなのです。

(文責:グローバルインパクト 代表 船川淳志)